こんばんは。前回に引き続き、加法定理についての話をしていこうと思います。
公式の幾何学的説明をする前に、少し三角比について考えてみます。
三角比を最初に習った際に、おそらくみなさんは、直角三角形での斜辺や底辺、高さの比がsin,cos,tanにあたると教えられたと思います。では内角が90°以上のものが存在する直角三角形は存在するのでしょうか?
勿論そんなものは平面幾何のうえでは存在しません。それならば、例えばsin120°などはいったい何を表しているのかが問題となります。
三角比が全角度0~360°までに拡張された場合、それは極座標と言われるものになります。(もう少しきちんと言うとデカルト座標系と極座標系を結ぶものになります)
そのため、前回見たように座標系特有の象限という考え方がどうしても必要になってきます。
では、仮に通常の直角三角形を扱う場合ならば、前回とは異なる図形的な証明が可能なのではないでしょうか。
今回は二つ紹介します。
(1)
図1
(こちらの解法は純粋に三角形のみを用いた手法で、参考書に乗っていることもままあります)
図1の様な三角形を考えます。
辺ABの長さをaとおきましょう。このとき、直角三角形ABDに注目すると、BD=a*sin(+),AD=a*cos(+)です。
また、直角三角形ABEに注目するとBE=a*sin(β),AE=a*cos(β)です。
ここから、直角三角形BFEについて考えると、BF=BE/cos(α),EF=BE*tan(α).
更に直角三角形ADFについて考えてみれば、FD=AF*sin(α),AD=AF*cos(α),(AF=AE-EFを利用)
DF+FB=DBなので、左辺を計算してみると、
(左辺)=a*sin(β)/cos(α)+a*{cos(β)-sin(β)*tan(α))}*sin(α)
=a*sin(β)/cos(α)*{1-(sin(α))^2}+a*cos(β)*sin(α)
=a*{sin(α)*cos(β)+sin(β)*cos(α)} (∵1-sin^2=cos^2,cos(α)>0)
また、右辺を見てみれば、a*sin(α+β)なので、sinの加法定理が証明できました。
今回は省略しますが、cosの加法定理も上のように比を繋いでいくと証明できます。(AD=AC-CDに帰着させます)
(2)
図2
こちらの解法はオリジナルです。座標と直角三角形を組み合わせたものになっています。
頂点AのX座標がcos(α+β),Y座標がsin(α+β)となるように、AO=1になっています。
なので、OA=cosβ.CA=sinβとなっています。
このときのAのY座標はDBの長さに等しいので
DB=sinα*cosβ+sinα*cosβ
X座標は
OD-AB=cosα*cosβ-sinα*sinβ
となり、加法定理が導けます。(α-βも作図できますが今回は省略します)
こちらの方は三角関数の合成にも応用できるので、便利です。
以上、見てきたように、座標として拡張されていないなら(1),(2)のように直角三角形を使って証明できます。実をいうと(2)の方は全ての角度で使用できます。(対頂角やαーn*90°やらを使うと180°以上の角に対応できます)
式だけを追っていると見えない三角比の幾何的な意味をくみ取っていただけたら何よりです。